[EMARF]えんがおベンチPJ -デザインご紹介-

 我々SapeTeaが一般社団法人えんがおのベンチプロジェクトに提供したベンチについて説明します。詳しいプロジェクト内容については別記事にて説明します。まず「柔軟性」と「遊び」、この二つがベンチをデザインする上でのテーマとなりました。公共物というものは少なからず使う人その時によって使用方法や要求される機能が変わってくるものであり、そこに求められるものが「柔軟性」です。そしてそのベンチに惹きつける、あるいは愛着を持たせるものが「遊び」です。

 まず、このベンチの大きな特徴といえば、着席されていない部分の背もたれがちょうど腰のあたりまで倒れ込む造りとなっている点です。ベンチには人がどの位置に座るのか、何人座るのか、どんな体格であるのか、このような差が常に生まれると思います。それに対して、倒す背もたれの数や位置によって脇机や肘掛けなど、利用者の目的や特徴に沿う形態へと対応することができるのです。例えば二人で間隔をあけて座り、間の背もたれをすべて倒してお菓子をつまむことができる。かつてはよく見られたご近所さんと碁盤を挟むシーンもまた見られたらよいでしょう。公共物である以上、地域コミュニティーへの貢献も必要不可欠であるわけですが、形態の自由によってその役割を果たしてくれると考えています。そしてこの可動性が遊びの要素としても活きてきます。

 「遊び」がどこから生まれるのか、それは多くの場合、選択肢から生まれる変化によるものだと思います。ボールを誰にパスするのか、パズルのピースをどこにはめるのか、その選択肢が多く複雑なほど遊びというものは奥深いものになるでしょう。そして、このベンチが他のものとは違っている性質はこの選択肢をもっているという点です。自分がどこに座りたいのか、座った際にどうすれば使い勝手が良いのか、背もたれを倒す位置や数という選択肢の中にシンプルな「遊び」を見出すのです。我々が想定しているのはあくまでも先に述べた二通りの使い道ですが、新しい使い方を編み出すことも楽しみの一つとなり得るでしょう。まさに「柔軟性」と「遊び」をつなぐキーワードこそがこの「選択肢」でした。

 ただ背もたれを倒すという行為であれば至極シンプルな遊びにしかならないため、そこに視覚的な遊びも取り入れることにしました。背もたれの波うった輪郭、この形状は勿論外観のデザインに温かみを持たせるという意図もありますが、一般的なベンチに取り入れたとしても、座っている人からすれば視界には入らないデザインとなります。ですがこのベンチでは、座っている状態でも視界に入りやすい部分があり、それは背もたれを倒した際に腰の高さまで下りてくる頂部の輪郭であす。倒す場所によって違う肘掛けの長さが次第に波型を表していき、滑らかな机の姿に移り変わってくる、そういった視覚的な変化も楽しみの一つとなるでしょう。

 さて今作の重要な意識としては、求められる複数の要素に共通するキーワードから形や機能を作り上げること、そして特徴のある形状をどれだけ見せることができるのかということでした。言い換えれば、第一に作るものに求められる要素は何か。第二にその共通項を実現させる機能は何か。そして第三にその機能を如何に見せるのか。「形態は機能に従う」という言葉があるように、今後人のために創作していく上では必ず踏まなければならないステップでしょう。